「サーボモータやステップモータで、原点復帰しても毎回位置が数ミリずれる…」
「自動運転を続けていると、徐々に位置がズレていって干渉エラーで止まる…」
搬送装置やロボット、マシニングセンタの位置決めに不可欠な「エンコーダ(ロータリーエンコーダ)」。目に見えない電気パルスで位置を制御しているため、一度カウントズレ(パルス抜け・多カウント)が起きると原因の特定が難しく、現場の保全マンを悩ませる典型的なトラブルです。
この記事では、エンコーダの位置ズレが発生する原因から、現場で真っ先に確認すべきポイント、測定器を使った切り分け手順、再発防止策までをわかりやすく解説します。
結論:原因の8割は「カップリングの滑り(機械的要因)」か「ノイズ干渉(電気的要因)」
エンコーダの位置ズレが発生した際、疑うべきポイントは大きく2つに分かれます。
- 機械的要因(物理的なズレ): モータ軸とエンコーダ軸をつなぐ「カップリングの緩み・滑り・偏芯」
- 電気的要因(パルスの誤認識): 通信線への「ノイズ乗りに伴う過剰カウント」または「高速パルスの読み落とし(パルス抜け)」
「毎回決まった量だけズレるのか(機械的・パラメータ要因)」それとも「動かすたびに不規則にズレが大きくなるのか(ノイズ・滑り要因)」を見極めることが、最短復旧の鍵となります。
主な原因
エンコーダのカウントズレを引き起こす主な原因は以下の4点です。
- 軸継手(カップリング)の締め付け不足・イモネジ緩み
- 加減速時のショックや振動により、軸とカップリング固定部がわずかに滑り、回転角とエンコーダのパルス数が一致しなくなる。
- 信号線へのノイズ干渉(シールド処理不良・動力線との平行配線)
- インバータやサーボアンプの切替ノイズがエンコーダのA相・B相信号線に乗り、PLCやコントローラが「ノイズをパルスとして誤カウント」してしまう。
- アブソリュート(絶対値)エンコーダのバッテリー低下・原点メモリ消失
- アブソエンコーダのバックアップ用リチウム電池が消耗し、電源OFF中の位置情報がクリア・途切れを起こしている。
- 内部光学ディスク・受光素子の劣化・油膜付着
- エンコーダ内部のスリットディスクに油煙や粉塵が入り込んだり、LED発光素子が劣化してパルスの立ち上がりが鈍くなり、高速回転時にパルス抜けが発生する。
現場での確認・切り分け方法(4ステップ)
現場で位置ズレが発生したら、以下の手順で原因を切り分けます。
ステップ1:ズレの「再現性(規則性)」を確認する
- 規則的(毎回〇mmずつ固定でズレる): 原点ドグの位置ズレ、パラメータ設定ミス、ギア比計算のズレを疑う。
- 不規則(動かすたびに累積してズレる・方向によって変わる): カップリングの滑り、バックラッシ、ノイズ干渉を疑う。
ステップ2:機械的結合部(カップリング)の目視・合いマーク点検
- エンコーダ軸と相手軸の結合部(カップリング)のネジに緩みがないか確認します。
- 軸とカップリングの境界に「合いマーク(アイマーク)」を油性ペンでつけ、手動で数回往復動作させた後にマークがズレていないか確認します(ズレていれば機械的な滑り確定)。
ステップ3:シールド処理と配線ルートの確認
- エンコーダケーブルのシールド線が、制御盤側のアース端子(FG)に確実に落ちているか確認します。
- シールド線の片側接地/両側接地の施工ミスや、アース線の浮き、動力線(AC200V/400V)と同じ配線ダクト内で密着配線されていないかチェックします。
ステップ4:PLC・コントローラの「現在値(カウント値)」の追従チェック
- エンコーダを手でゆっくり回した時と、高速で回した時で、同じ回転角度に対する現在値(パルス累積値)の戻り数が「0(元の位置)」に戻るか確認します。高速時だけズレる場合は「ノイズ」または「パルス応答速度オーバー」です。
実際の現場例:バックアップ電池切れと「カップリングボルトの微小滑り」
ある高精度ワーク供給用サーボインデックス台車で、運転開始から時間が経つにつれて停止位置が徐々にズレていくトラブルが発生しました。
現場で起きていたこと
- 初期状況: 朝の立ち上げ時は正常だが、数時間自動運転を続けると停止位置が約2mm奥へズレてしまい、後段のアームと干渉。
- 原因調査: エンコーダケーブルやアンプに異常はなし。合いマークをつけて高速正逆運転を繰り返したところ、加減速の衝撃でカップリングのクランプボルトがわずかに滑り、累積して角度がズレていることが判明しました。
- 対処・改善: 耐振動性の高い「オルダム形/ノンバックラッシ型高剛性カップリング」へ変更し、規定トルクでの締め付けとネジロック剤の塗布を実施。ズレが完全に収まり復旧しました。
再発防止策
エンコーダトラブルを未然に防ぐための保全ポイントです。
- 高耐ノイズ仕様(ラインドライバ出力)の選定
- 長距離配線やノイズ環境下では、オープンコレクタ出力ではなくノイズに強い「ラインドライバ(RS-422準拠)出力」のエンコーダを選定する。
- 定期的な合いマーク点検とカップリング増し締め
- 毎月の定期点検項目に「カップリングの目視確認とねじの増し締め」を組み込む。
- アブソエンコーダ用バッテリーの定期交換
- 盤内やアンプのバッテリーは「2〜3年周期」で計画的に新品交換する(アラームが出る前に交換)。
まとめ:位置決めの安定化が「設備品質」を左右する
エンコーダの位置ズレ対応のポイントを振り返ります。
- ズレに「規則性(毎回同じ量)」があるか「不規則(累積する)」かを見極める
- カップリングに「合いマーク」を打って、物理的な締め付け滑りを真っ先に確認する
- ノイズ対策(シールド接地・動力線との離隔)を徹底する
🔻 あわせて読みたい現場のトラブルシューティング
現場でよく発生する関連トラブルの切り分け・対応手順もまとめています。
💡 複雑なトラブルを解き明かす力は「キャリアの大きな武器」になる
エンコーダのカウントズレのように「電気と機械の要素が複雑に絡み合うトラブル」の原因を突き止め、論理的に復旧できる保全マンは、どの現場でも非常に重宝されます。
もし「今の職場で夜勤やシフト勤務が続いて体力が厳しい…」「自分の現場スキルや経験なら、もっと条件の良い大手メーカーや優良企業を狙えるのでは?」と感じている方は、実際の体験談や転職ロードマップを参考に、自分の市場価値をチェックしてみてください。

コメント