「モータが突然停止して、制御盤を開けたらサーマルリレーのリセットボタンが飛び出ていた…」
「リセットボタンを押して再起動したのに、数分後にまた止まってしまう…」
モータの焼き付きを防ぐための命綱である「サーマルリレー(熱動形電磁継電器)」。設備が急に止まった際、焦って原因を確認せずにリセットボタンを押すだけでは、根本的な解決にならずモータの寿命を縮めたり全損させたりしてしまいます。
この記事では、サーマルリレーがトリップした際の現場での原因切り分けから、正しい復旧ステップ、再発防止策までを解説します。
結論:まずは「機械的な過負荷」か「電気的な相欠け(欠相)」かを疑う
サーマルリレーは、内部のバイメタルがモータ電流の熱によって湾曲することで動作します。トリップした際は、「モータに流れた過大な電流の原因がどこにあるか」をつき止めることが最優先です。
- 機械的な原因: コンベヤの噛み込み、軸受(ベアリング)の固着による重負荷
- 電気的な原因: 電磁開閉器の接点不良による欠相(単相運転)、整流器や配線の短絡・緩み
「安易なリセット再投入」は絶対に避け、必ず原因を排除してから復旧させましょう。
主な原因
サーマルリレーがトリップする主な原因は以下の4点です。
- 過負荷(機械的異物の噛み込み・噛み合い不良)
- 搬送物の詰まり、ギヤやピローブロックの破損、ベルトの張りすぎなどで、モータに定格以上の負荷がかかり続けた。
- 欠相(単相運転)
- 3相(R/S/T)電源のうち1相のマグネットコンタクタ(電磁接触器)接点が荒れて通電せず、残り2相に過大な電流(約1.73倍)が流れた。
- 整流つまみ(整流ダイヤル)の設定値ズレ
- モータの定格電流値に対して、サーマルリレーの電流設定ダイヤル(A値)が低すぎる位置にセットされている。
- 周囲温度の異常上昇
- 制御盤内のファン故障や夏場の高温により、盤内温度が著しく上昇し、バイメタルが誤作動しやすくなっている。
現場での復旧・確認手順(5ステップ)
現場でサーマルがトリップした際、安全かつ迅速に原因を特定する5ステップです。
ステップ1:トリップ表示(リセットボタン)の確認
サーマルリレー本体の緑色や赤色の「リセットボタン(手動リセットピン)」が飛び出しているか目視で確認します。トリップ直後はバイメタルが冷えるまで(約1〜3分間)リセットできません。
ステップ2:機械側の手回し確認(電源OFF状態)
安全のため主電源を落とし、モータ軸やコンベヤの駆動部を手で回してみます。
- 重くて回らない・引っかかる: 機械側の異物噛み込みやベアリング固着が原因です。
ステップ3:マグネットコンタクタ接点の点検
マグネットスイッチ(電磁接触器)の接点カバーを外し(または隙間から)、接点が焦げて黒くなっていないか、1相だけ浮いていないか点検します。
ステップ4:リセット操作とクランプメーターによる電流測定
冷えたことを確認し、リセットボタンを押し込んでから手動で試運転を行います。
- 確認ポイント: クランプメーターでR・S・T各相の電流値を測定します。
- 3相すべての電流値が均等かつモータ銘板の「定格電流値」以下に収まっているか確認します。1相だけ0Aの場合は「欠相」です。
ステップ5:設定ダイヤルの再確認
サーマルリレー正面にある調整ダイヤルが、接続されているモータの全負荷電流(銘板記載の定格電流)と一致しているか確認します。
実際の現場例:コンタクタ接点摩耗による「欠相トリップ」
ある加工ラインの切削液ポンプ(モータ)が運転開始から約10分後にサーマルトリップを起こす事象が発生しました。
現場で起きていたこと
- 初期状況: ポンプ軸を手で回すとスムーズに回転し、機械的な異常(噛み込み)は見られなかった。
- 原因調査: サーマルをリセットして再起動し、クランプメーターで電流値を測定したところ、R相:0A、S相:12A、T相:12A となっていました(定格電流は7A)。
- 応急・永久処置: マグネットコンタクタを取り外して内部の主接点を確認すると、R相の接点がスパークアークで著しく消耗・欠損していました。マグネットスイッチ本体を新品に交換したところ、3相ともに平衡した正常電流(5.8A)に戻り、トリップも解消しました。
再発防止策
サーマルトリップを未然に防ぐための保全ポイントです。
- 定格電流に合わせた正確なダイヤル設定
- モータを交換・載せ替えた際は、必ずモータ銘板の電流値を確認し、サーマル調整ダイヤルを再設定する。
- マグネットスイッチの定期的な接点チェック・更新
- 開閉頻度が高い回路の電磁接触器は、定期点検時に接点の荒れや黒ずみをチェックし、寿命が来る前に予防保全で交換する。
- 「欠相保護付きサーマルリレー(2Eサーマル)」への更新
- 欠相による過電流をより早く・確実に検知するため、通常のサーマルリレーから欠相保護機能付き(2E)への置換を検討する。
まとめ
サーマルリレーがトリップした時の対応ポイントは以下の通りです。
- 冷えるまで少し待ち、安易に連続リセットして再起動しない
- 電源を切り、機械を手回しして「噛み込み・固着」がないか調べる
- 復旧時はクランプメーターで「3相のバランス(欠相の有無)」と「電流値」を必ず測定する
サーマルリレーが動いたということは、モータを焼損から守ってくれたということです。慌てず根本原因を取り除いてから設備を再稼働させましょう。

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