【温度制御系】熱電対の断線・温度表示異常(パラつき)の原因と対処法【現場で見るポイント】

「温度指示計(温調計)の表示が突然マイナスに振り切れたり、最大値(OVER)を表示してヒーターが止まってしまった…」

「設定温度は一定のはずなのに、表示温度が数十℃単位でチラチラとパラついて安定しない…」

加熱炉、成形機、乾燥炉など、工場のあらゆる熱処理設備で活躍する「熱電対(サーモカップル)」。構造がシンプルで頑丈なセンサーですが、経年劣化や環境の影響で「断線」や「表示パラつき」といった突発トラブルが発生します。

この記事では、熱電対の温度表示異常が起きた際の主な原因から、現場で「テスター」と「補償導線」を使って即座に原因箇所を特定する手順、再発防止策までを分かりやすく解説します。

結論:まずは「温調計の入力異常(バーンアウト)」か「熱電対・補償導線側のトラブル」かを切り分ける

熱電対の表示異常が発生した際、疑うべきポイントは大きく3つに分かれます。

  • 熱電対本体の断線・劣化(5割): ヒートサイクル(熱伸縮)による素線の断線、保護管内の酸化・短絡
  • 補償導線・配線部の接触不良・ノイズ(4割): 補償導線の極性間違い、端子台の緩み、インバータ配線からのノイズ重畳
  • 温調計・PLC入力ユニットの故障(1割): 入力回路の不具合、パラメータの設定間違い(熱電対種類の誤選定)

現場での第一歩は、「温調計の端子部で熱電対(補償導線)を外し、テスターで導通と熱起電力を確認すること」です。

主な原因

表示異常(断線表示・指示値のパラつき)を引き起こす主な原因は以下の4点です。

  1. 熱伸縮による熱電対素線の断線(バーンアウト)
    • 加熱と冷却の繰り返しによる金属疲労や、保護管内部での酸化・腐食により素線が途切れる。温調計は安全対策として「バーンアウト機能(上限または下限に振り切らせてヒーターをOFFにする機能)」が働き、ERR表示になる。
  2. 端子台のネジ緩み・酸化による「接触抵抗の増大」
    • 中継端子台のネジが振動で緩んだり、周囲の雰囲気ガスや湿気で端子が酸化すると、熱電対が発生させる微小な熱起電力(mV単位)が正常に温調計へ伝わらず、表示が激しくパラつく。
  3. ノイズの重畳(インバータや動力線との平行敷設)
    • 熱電対の信号は数ミリボルト(mV)と非常に微弱です。近くにインバータの出力線や大容量モータの動力線が平行して走っていると、誘導ノイズを拾って指示値が浮動・パラつきます。
  4. 補償導線の種別間違い・極性(+ー)の逆接続
    • K熱電対に対して別の種類の補償導線を接続していたり、中継端子で+とーを逆につなぐと、周囲温度が変化した際に指示値が大きくズレる(温度が上がると表示が下がる等)。

現場での確認・切り分け方法(4ステップ)

現場で温度異常が発生したら、以下の手順で原因を絞り込んでいきます。

ステップ1:温調計のバーンアウト表示(ERR)の確認

  • 温調計の画面に「UUUU」「HHHH」「S.ERR(センサーエラー)」などの表示が出ていないか確認します。
  • これが出ている場合、温調計側は「入力線が開路(断線)された」と判断しています。

ステップ2:中継端子・温調計端子での「抵抗値(導通)」チェック

  • 必ず設備電源を落とすか、入力線を温調計から取り外してからテスターの抵抗レンジ(Ω)を当てます。
  • 正常時: 数Ω〜数十Ω程度(測温抵抗体 Pt100とは異なり、熱電対は先端が溶接されているため数Ωの低抵抗を示す)。
  • 断線時: 無限大(∞Ω)を示す。→ 熱電対本体または補償導線の断線が確定。

ステップ3:テスターの「mV(ミリボルト)レンジ」で熱起電力を測定

  • 温調計から外した熱電対(補償導線)の両端にテスターをDC mVレンジで接続します。
  • 測温部が熱せられていれば、温度に応じたミリボルト(K熱電対なら100℃で約4.1mV、200℃で約8.1mV)が発生します。
  • ドライヤーやライター等で熱電対の先端を少し温めた際、テスターのmV値がスムーズに上昇するか確認します。数値が途切れたり激しく飛ぶ場合は内部の接触不良です。

ステップ4:「端子短絡(ジャンパー)」による温調計側の単体チェック

  • 温調計の熱電対入力端子(+とー)を、短い線(クリップや銅線)で直接短絡(ショート)させます。
  • 温調計の表示が「制御盤内の周囲温度(室温)」でピタリと安定する場合: 温調計は正常。原因は外部の熱電対・補償導線側にあります。
  • 短絡しても表示がおかしい場合: 温調計の入力回路故障、または設定パラメータ(入力種別)のバグです。

実際の現場例:インバータ増設後の「温度表示パラつき」の落とし穴

ある熱処理炉の配管温度管理において、「ヒーターの制御温度(200℃)付近で、温調計の表示が180℃〜220℃の間で激しく乱高下する」という現象が発生しました。

現場で起きていたこと

  1. 初期状況: 最初は熱電対の不良を疑い新品に交換したが、症状は全く改善されなかった。
  2. 原因調査: 最近の省エネ工事で、すぐ隣に排気ファン用の「インバータ」が新設されていたことが判明。補償導線のルートを確認すると、ダクト内でインバータの二次側(モータ配線)と補償導線が約3メートルにわたって束ねられて密着配線されていました。
  3. 対処・改善: 補償導線を「シールド付き補償導線」に変更し、シールド線の片側(温調計側)をアース(FG)に落ちすとともに、インバータ配線から別ルート(15cm以上離隔)へ配線替えを実施。ノイズの影響を完全に遮断し、表示は200.0℃で完璧に安定しました。

再発防止策

熱電対のトラブルを未然に防ぎ、高精度な温度管理を維持するための保全ポイントです。

  • 動線部には「可撓性(耐屈曲)熱電対」を使用する
    • アクチュエータやロボットアームなど、常に動く部分の温度測定には、素線が細かく編み込まれた耐屈曲用シース熱電対を選定する。
  • 補償導線は「シールド線」を使用し、動力線と分離する
    • ノイズによる表示パラつきを防ぐため、補償導線は必ず金属管(電線管)を通すか、シールド付き導線を使用して動力線(AC200V以上)とは別ダクトに配線する。
  • 中継端子台の「圧着端子(Y端子)」の熱伸縮チェック
    • 端子台の定期点検時には増し締めを行う。特に熱がかかる場所の中継端子には、スプリングロード式の端子台やネジロック塗布を検討する。

まとめ:微少信号(mV)だからこそノイズと断線チェックを確実に

熱電対の温度異常対応のポイントを振り返ります。

  1. 温調計から端子を外し、テスター(ΩとmV)で熱電対本体の良否を判定する
  2. 温調計の端子間を直接ショートさせて「温調計自体の故障」を切り離す
  3. 表示がパラつく場合は、近くのインバータや動力線からの「ノイズ干渉」と「端子の緩み」を疑う

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