「ラインのモータが突然停止し、インバータの表示パネルに『OC(Over Current)』や『OV(Over Voltage)』が出てトリップしてしまった…」
「アラームをリセットして再起動しても、加減速のタイミングでまたすぐ止まってしまう…」
モータの回転数制御や省エネ運転に欠かせない「インバータ(VVVF)」。現場で最も頻繁に遭遇し、かつ原因特定に迷いやすいのが、この「過電流(OC)」と「過電圧(OV)」のアラームです。
この記事では、インバータが過電流・過電圧を起こす主な原因から、現場で「発生タイミング」を軸にして迅速に原因を切り分ける手順、再発防止策までを分かりやすく解説します。
結論:トリップが「加速時・減速時・定速時」のどこで起きているかで原因を絞り込む
インバータのOC(過電流)やOV(過電圧)が発生した際、闇雲に配線を疑ったりパラメータを弄ったりするのはNGです。
最も重要な切り分けのポイントは、「トリップが発生するタイミング」を確認することです。
- 加速時に発生: 加速時間が短すぎる、または起動時の負荷(慣性)が大きすぎる、モータのロック
- 減速時に発生: 減速時間が短すぎる(回生エネルギー超過)、ブレーキ抵抗器の断線・不具合
- 定速(通常運転)時に発生: 瞬間的な負荷変動(咬み込み)、モータ・ケーブルの絶縁劣化(地絡・短絡)
この発生タイミングを特定するだけで、解決へのアプローチが半分以上決まります。
1. 過電流(OC:Over Current)の主な原因と対処法
過電流は、インバータの定格電流を超える過大な電流が内部のパワー素子(IGBT)に流れた際に、素子を保護するために動作します。
主な原因
- 加減速時間の短さ(設定不良): 急加速・急減速させようとして瞬時に過大な電流が流れている。
- メカ側の機械的ロック・異物咬み込み: 搬送ラインやファン・ポンプが機械的に噛み込んで固着している。
- モータ線・モータ内部の絶縁劣化(地絡・短絡): モータケーブルの被覆破れや、モータ巻線の焼損によるショート。
- V/fパターン(トルクブースト)の設定不備: 起動トルクを上げようとして過度に電圧をかけすぎている。
現場での確認・切り分け手順
- モータ二次側(インバータ出力側)を外し、メガテストを行う
- インバータの出力端子(U, V, W)からケーブルを外し、モータ側に向けてメガー(絶縁抵抗計)で相間および対地絶縁抵抗を測定します。
- 単体運転(モータ切り離し)での確認
- モータ線を外した状態でインバータ単体を運転(周波数出力)させてみます。
- 単体でもOCが出る場合: インバータ内部(パワー素子)の破損です。
- 単体で正常に回る場合: 配線・モータ・メカ側に原因があります。
- 加速時間(Acc)を少し伸ばしてみる
- パラメータの加速時間を「5秒→10秒」などに変更して動作が安定するか確認します。
2. 過電圧(OV:Over Voltage)の主な原因と対処法
過電圧は、モータからインバータ側に逆流してくる「回生エネルギー」によって、インバータ内部のDC母線(直流電圧部)の電圧が規定値を超えた際に動作します。
主な原因
- 減速時間が短すぎる(急減速): モータが減速する際、慣性(インナーシャ)によってモータが「発電機」として働き、回生パワーが内部コンデンサに流れ込む。
- 制動抵抗器(ブレーキ抵抗)の断線・サーマル飛び: 回生エネルギーを熱として逃がすための抵抗器が断線している、または制動ユニットが故障している。
- 電源電圧の異常上昇: 施設内の受電電圧が過度に高くなっている(特に夜間や軽負荷時)。
- 風や外部力による「連れ回り」(ファン等): 送風機などで、電源が入っていない状態で外気によって羽が空回りさせられている。
現場での確認・切り分け手順
- 減速時間(Dec)を伸びしてみる
- パラメータの減速時間を延ばすか、インバータの「減速中過電圧回避機能(スール機能)」を有効にします。
- 制動抵抗器(ブレーキ抵抗)の抵抗値測定
- ブレーキ抵抗器の端子(P-PR間や+ -間など)を外し、テスターで抵抗値を測ります。
- 無限大(∞Ω)を示す場合: 内部の抵抗体が断線しているため交換が必要です。
- 外部制動ユニット(BU)の動作点検
- 別置きの制動ユニットを使用している場合、減速時にユニットのLED(回生動作表示)が点灯しているか確認します。
現場での実体験:減速時のOVトリップとブレーキ抵抗の意外な落とし穴
ある搬送用コンベアラインで、「休車明けの稼働開始時や、大型ワーク搬送後の減速時に頻繁にOV(過電圧)アラームで停止する」というトラブルが発生しました。
現場で起きていたこと
- 初期対応: 減速時間を「3秒から8秒」に延ばしたところ、トリップの頻度は減ったものの完全には治らず、タクシータイム(サイクルタイム)に悪影響が出ました。
- 原因調査: 制動抵抗器をテスターで測定したところ、抵抗値自体は正常。しかし、抵抗器の手前に設置されていた「保全用サーマルリレーのトリップ」と「配線の緩み」を発見しました。ワークが重い時に回生エネルギーが集中し、サーマルが一時的に働いて抵抗器がカットされていたことが原因でした。
- 対処・改善: サーマルリレーの許容電流値を見直し、抵抗器の容量(W数)をワンランク上に選定変更。結果、減速時間を元の3秒に戻しても安定してピタッと止まるようになりました。
再発防止策
インバータの過電流・過電圧トラブルを防ぐための保全ポイントです。
- 冷却ファンおよびヒートシンク(放熱フィンの清掃)
- 内部温度が上がると素子の許容特性が下がり、OC/OVが起きやすくなります。制御盤のフィルター清掃とファン動作確認を定期的に行います。
- トリップ履歴(アラームヒストリ)の確認と電流・電圧モニタリング
- トリップ直前の「周波数」「出力電流」「DC電圧」の値をパラメータ履歴から確認し、普段の稼働時より何アンペア上がっていたかを数値で把握します。
- 端子台の定期増し締め
- モータ二次側の振動や熱伸縮によるネジ緩みは、相欠けや接触抵抗増大によるOCトリップの原因になります。
まとめ:アラームの「タイミング」と「二次側測定」が早期復旧のカギ
インバータのOC・OV対応のポイントを振り返ります。
- 加速・減速・定速の「どの瞬間にトリップするか」で原因を絞り込む
- モータ二次側を外してメガー測定&単体運転を行い、「インバータ故障」か「モータ・配線故障」かを切り分ける
- OVの場合はブレーキ抵抗器の断線や関連サーマルの作動を疑う
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