「エラー表示も出ず、警告ブザーも鳴らないのに搬送装置がピタッと止まって動かない…」
「タッチパネルを見ても『自動運転中』のまま、次の動作へ進まない…」
大型の搬送装置(搬送台車、スタッカークレーン、移載コンベヤなど)で最も厄介なのが、この「だんまり停止(無言停止)」です。明確な異常アラームが発報しないため、どこを点検すればいいのか迷って復旧に時間がかかりがちです。
この記事では、大型搬送装置がだんまり停止を起こす原因から、現場でPLCやセンサーを使って原因を速やかに特定する手順、対処法までを解説します。
結論:だんまり停止は「インターロック(進出条件)の未成立」が9割
アラームが出ずに途中で止まる最大の理由は、プログラム(PLC)側が「次の動作へ進むための条件(インターロック)が整うのを待っている状態」だからです。
- インターロック未成立: 「ワーク在室」「安全柵クローズ」「前工程準備完了」などの信号が1つだけ欠けている
- 条件読み飛ばし・チャタリング: ドグを通過した際の一瞬の信号読み落とし
まずは「装置が今、どのステップ(動作工程)で待機しているか」を特定することが早期復旧の鍵となります。
主な原因
大型搬送装置がだんまり停止を起こす主な原因は以下の4点です。
- インターロック用センサー(確認スイッチ)の微はずれ・応答不良
- ドグの倒れ、センサー面の汚れ、リミットスイッチのストローク不足により、「位置決定(原点・停止位置)」や「ワーク着座」の信号が入っていない。
- 上位システムや前後工程との「取り合い信号(ハンドシェイク)」の途絶
- 「出庫要求」「受入可能(TR-REQ/COMP)」などの通信・接点信号が、前後コンベヤや上位システム(WMS/WCS)側で途切れている。
- 安全回路(ライトカーテン・安全プラグ等)の微妙な瞬断
- 非常停止ではないものの、安全スイッチの接点接触不良やライトカーテンの光軸瞬断により、起動条件がリセットされている。
- プログラム(PLC)のステップ歩進条件の抜け落ち
- 搬送途中でワークを手で動かしたり、手動介入したことで、実際の状態と内部メモリ(ステップ番号)の整合性が崩れている。
現場での確認方法(4ステップ)
現場でだんまり停止が発生したら、以下の順番で確認を進めます。
ステップ1:タッチパネル(HMI)の「工程ステップ(工程番号)」確認
操作盤のモニタで、現在の動作ステップがどこで止まっているか(例:「移載中」「昇降下降待ち」「前進端検出待ち」など)を確認します。画面上でグレーアウトしている「成立条件」を探します。
ステップ2:停止位置の物理的な微ズレとセンサー入力確認
- 搬送台車やアームが「目標停止位置」まで届いているか、スケールや目視で確認します。
- 停止位置にある近接センサーや光電センサーのLEDが正常に点灯しているか確認します(1mmのズレで信号が入らないケースが多発します)。
ステップ3:前後工程との「取り合い信号」の確認
装置間の渡り配線や光通信ノード(可動台車等の場合)を確認し、「搬送要求(REQ)」「受入許可(READY)」などのハンドシェイク信号が相互にやり取りされているか確認します。
ステップ4:PLCモニタ(ラダー回路)でのON/OFF確認(保全マン向け)
パソコンをPLCに接続し、止まっているステップの「実行条件(ラダー回路のA接点)」をモニタリングします。どの接点(センサーや内部フラグ)が「OFF」のまま遮断しているかを一目で見つけ出します。
実際の現場例:コンベヤの「ワークはみ出しセンサー」微遮光
ある自動倉庫の大型台車(STC)で、棚からの移載途中にアラームなしで動作が完全停止するトラブルが発生しました。
現場で起きていたこと
- 初期状況: 台車は「フォーク前進端」の位置で停止したまま動作せず、タッチパネルにはエラー表示なし。
- 原因調査: PLCのラダー画面でフォーク後退条件を確認したところ、「荷はみ出し検知センサー(光電)」がOFFになっていました。パレット上のフィルムの端がわずかに1cm垂れ下がり、センサーの光軸を遮っていたため、安全回路が「後退許可」を出していませんでした。
- 対処・改善: 垂れ下がったフィルムを整形し、手動で復旧。再発防止として、搬送手前の投入ラインに「形状検知ゲート」を設置し、サイズオーバーのパレットが自動倉庫内に入らないよう修正しました。
再発防止策
だんまり停止を減らすための保全ポイントです。
- タッチパネルへの「条件待ち画面(ステップモニタ)」の追加
- ソフトウェア担当と連携し、アラームだけでなく「〇〇センサー入力待ち」が画面で一目でわかるインターフェース(条件未成立表示)を構築する。
- ドグ・センサー取付金具の剛性アップと定期増し締め
- 大型装置の振動でセンサーブラケットが傾きやすいため、ダブルナット化やノックピン固定で位置ズレを防ぐ。
- 手動割込時の「原点復帰ルール」の標準化
- 途中で手動操作をした場合は、必ず指定の手順で「初期化(ステップリセット)」を行ってから自動運転に戻すよう作業手順を徹底する。
まとめ
大型搬送装置の「だんまり停止」対応のポイントは以下の通りです。
- 「故障」ではなく「何か(条件)を待っている状態」と捉える
- タッチパネルの工程番号や、停止位置のセンサーLED状態を真っ先にチェックする
- 原因が分からない場合は無理に手で押さず、PLCの回路モニタで未成立接点を探す
だんまり停止の原因を見極められるようになると、トラブルシューティングの時間が格段に短縮されます。

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